マクロツイーター

はてダから移行した記事の表示が崩れてますが、そのうちに直せればいいのに(えっ)

決定版! TeX のインストール・設定方法

皆さん、技術書を読みましょう!

お使いのコンピュータに TeX 環境を整える

[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門

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オンラインの TeX / LaTeX サービスを利用する

インストールいらずのLATEX入門  ―Overleafで手軽に文書作成

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以上!

完璧!! #えっ

Pandocで(u)pLaTeXしてみる話

どうやら、新しいPandocではビルドにLatexmkが使えるらしい。

  • Add latexmk as an option for --pdf-engine (#3195). Note that you can use --pdf-engine-opt=-outdir=bar to specify a persistent temp directory.

Pandocの「PDF出力エンジン」(--pdf-engine)として指定できるLaTeXエンジンはpdfLaTeX、XeLaTeX、LuaLaTeXに限られている。しかし、Latexmkが使えるようになったということは、これを利用して「(u)pLaTeX+dvipdfmxでPDFを生成する」ことができるはずである。

PandocでLatexmkしてみる

とりあえず、簡単な英語のMarkdown文書を用意して試してみる。

[test1.md]

# Welcome!

Hello, Pandoc *chaos*!

これを--pdf-engine=latexmk付のpandocで変換する。

※プロンプトを>で表す。

> pandoc --pdf-engine=latexmk test1.md -o test1.pdf
Latexmk: Run number 1 of rule 'pdflatex'
Latexmk: Run number 2 of rule 'pdflatex'

f:id:zrbabbler:20190506233335p:plain
test1.pdfの内容

フツーにPDFが出力できた。端末表示をみると、どうやらpdfLaTeXを使うワークフローが選択されているようである。実際、出力PDFの文書情報のProducerの値もpdfTeX-1.40.20となっている。

さらに細かく挙動を調べてみると、以下のようになっているようだ。

  • latexmk起動時に-pdfオプションが指定されている1
  • latexmk実行時にカレントディレクトリは変更されていない。
    • Latexmkの-outdirオプションでLaTeXの出力先を変えている。
    • 従って、カレントにlatexmkrcがある場合は読み込まれる。
    • ただし、latexmkrc内に$pdf_modeの設定を書いても、起動オプションの-pdfにより上書きされて、常に$pdf_mode=1となる。

Pandocで(u)pLaTeXする方法

以上のことから考えると、「Pandocで(u)pLaTeX+dvipdfmxを使う」ためには以下のようにすればよいことがわかる。

  • pandocコマンドのオプションに-pdf-engine=latexmkを指定する。
  • latexmkのオプションに-pdfdviTeX→DVI→PDFのワークフローを指定)を追加するために、pandocのオプションに--pdf-engine-opt="-pdfdvi"も指定する。
  • カレントにlatexmkrcを置いて、そこに(u)pLaTeX+dvipdfmxを使うための設定を書く。

つまり、Pandocのコマンド行は以下の形になる。

> pandoc --pdf-engine=latexmk --pdf-engine-opt="-pdfdvi" ......

latexmkrcの内容は(最低限として)以下のようにする。
※先述の通り、$pdf_modeの設定は効かないので不要。

upLaTeX+dvipdfmxの場合:

$latex = 'uplatex';
$bibtex = 'upbibtex';
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
$makeindex = 'mendex -U %O -o %D %S';

pLaTeX+dvipdfmxの場合:

$latex = 'platex -kanji=utf8';
$bibtex = 'pbibtex -kanji=utf8';
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
$makeindex = 'mendex -U %O -o %D %S';

もちろん、この設定はPDF生成に用いるコマンドを変更するだけのもので、PandocのLaTeXコード生成には何も影響を与えない。従って、ここで示したもの以外のPandocの設定は「途中で生成されるLaTeXファイルが(u)pLaTeXで通るようにする」必要がある。

実際にupLaTeXしてみた

例として、日本語のMarkdown文書をPandocのデフォルトのLaTeXテンプレートを通してupLaTeX+dvipdfmxのワークフローでPDFに変換してみる。デフォルトのLaTeXテンプレートは本来は(u)pLaTeXには対応していないが、BXjsclsのクラスのPandocモードであれば利用できる。

※もちろん、カスタムのテンプレートを指定してもよい。

[test2.md]

---
title: PandocでupLaTeXしたい話
author: 某ZR
documentclass: bxjsarticle
classoption:
  - pandoc
papersize: a5
---

# upLaTeXできると何がうれしいか

よくわからない。

※先頭にYAMLメタデータブロックを記述している。

これを次のコマンドで変換する。

> pandoc --pdf-engine=latexmk --pdf-engine-opt="-pdfdvi" test2.md -o test2.pdf
Latexmk: Run number 1 of rule 'latex'
Latexmk: Run number 2 of rule 'latex'
Latexmk: Run number 1 of rule 'dvipdf'

f:id:zrbabbler:20190506233146p:plain
test2.pdfの内容

別解

いちいちカレントにlatexmkrcを置くのは面倒である。代わりに、固定のディレクトリ(仮に/path/to/dirとする)にLatexmkの設定ファイルを置いた上でそれを-rオプションで読み込むという方法もある。

この場合、Pandocが生成するコマンド行において-rオプションが-pdfより後ろに置かれるため、設定ファイル内の$pdf_modeの記述で-pdfを上書きすることができる。従って、次のように$pdf_,modeを含めた設定ファイルを用意しておくとよい。

[/path/to/dir/uplatex-dpx.latexmk]

$latex = 'uplatex';
$bibtex = 'upbibtex';
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
$makeindex = 'mendex -U %O -o %D %S';
$pdf_mode = 3;

その上で、以下のコマンドを実行する2。(実際には改行なしの1行で入力する。)

pandoc --pdf-engine=latexmk
    --pdf-engine-opt="-r" --pdf-engine-opt="/path/to/dir/uplatex-dpx.latexmk"
    test2.md -o test2.pdf

まとめ

新しいPandocを使うと「Pandocで(u)pLaTeXする」のがチョットだけ楽になる、かもしれない。


  1. 実際のコマンド行は次の通り: latexmk -interaction=batchmode -halt-on-error -pdf -quiet -outdir=TEMPDIR TEMPDIR/input.tex;ここでTEMPDIRはPandocが生成した一時ディレクトリの名前。

  2. 一つの--pdf-engine-optでは一つのコマンド引数しか指定できないので、-r /path/to/dir/uplatex-dpx.latexmkというオプションを指定するには煩雑であるが--pdf-engine-optを2回書くしかないようである。

TeX Liveで令和してみる話

新しいTeX Live 2019が、日本のCTANミラーサイトにも届き始めているようである。

というわけで、早速、TeX Live 2019で令和してみる。和暦機能の説明については平成の記事で済ませてあるので、ここでは単純に結果だけを示す。

令和してみた結果

% pLaTeX文書
\documentclass[a4paper]{jarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503072821p:plain
jarticleな出力結果

令和!

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ujarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503072842p:plain
ujarticleな出力結果

令和!

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,a4paper]{jsarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503072857p:plain
jsarticleな出力結果

令和!

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ltjsarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503072913p:plain
ltjsarticleな出力結果

令和!

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[lualatex,ja=standard,a4paper]{bxjsarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503072940p:plain
bxjsarticleな出力結果

令和!

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[paper=a4]{jlreq}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503072959p:plain
jlreqな出力結果

令和!

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[tate,book,paper=b6,jafontsize=9pt]{jlreq}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503074100p:plain
縦組のjlreqな出力結果

令和!

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ltjsarticle}
% 例によってエスペラント
\usepackage[main=japanese,esperanto]{babel}
\newcommand{\Eo}[1]{%
  \begin{otherlanguage}{esperanto}#1\end{otherlanguage}}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門\\
  \Eo{Feliĉa Kurso pri la Lingvo {\TeX}}}
\author{mal-ZR}
\date{\today\quad(\Eo{\today})}
\begin{document}
\maketitle
% Neniu enhavo.
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503074141p:plain
Babelな出力結果

令和!

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[dvipdfmx,14pt]{beamer}
\usepackage{pxjahyper}
\renewcommand{\kanjifamilydefault}{\gtdefault}
\usepackage{bxwareki}% 和暦したい
\usetheme{EastLansing}
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\date{\warekitoday}% 和暦日付を明示指定する
\begin{document}
\begin{frame}
\titlepage
\end{frame}
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190503074406p:plain
Beamerな出力結果

令和!

まとめ

令和したい人は、新しいTeX Liveをインストールしよう!

TeXで平成してみる話

普通にやればオッケー。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,a4paper]{jsarticle}
\和暦
\title{{\TeX}言語、ダメゼッタイ!}
\author{某ZR}
\begin{document}
\maketitle
% ダメゼッタイ
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190430143858p:plain
平成できた

平成!

……なのであるが、日本語LaTeXの「和暦の日付」に関する機能について、もう少しキチンとまとめておく。

\today を和暦にする話

以下に挙げる和文文書クラスでは、当日日付(\today)を和暦で出力することができる。

  • pLaTeXの標準和文クラス: jarticle、jreport、jbook、tarticle、treport、tbook
  • upLaTeXの標準和文クラス: ujarticle、ujreport、ujbook、utarticle、utreport、utbook
  • jsclassesバンドルのクラス: jsarticle、jsreport、jsbook
  • LuaTeX-jaの和文クラス: ltjarticle、ltjreport、ltjbook、ltjtarticle、ltjtreport、ltjtbook、ltjsarticle、ltjsreport、ltjsbook
  • BXjsclsバンドルのクラス: bxjsarticle、bxjsreport、bxjsbook、bxjsslide
  • jlreqクラス

(恐らく、TeX Live収録の日本語用文書クラスはこれが全てである。)

これらのクラスでは、以下の命令を用いて\todayの和暦・西暦表示を切り替える。

  • \和暦\todayの年表示を和暦(元号)にする。
  • \西暦\todayの年表示を西暦にする。

既定値については注意が必要である。

  • pLaTeX/upLaTeXの標準和文クラス」および「LuaTeX-jaの“pLaTeX標準の互換クラス”1」については旧来は和暦が既定であったが、改元後に不適切な表示が出るのを防ぐため、2018年7月頃のリリースで既定が西暦に変更された。従って、これらのクラスにおいて\today命令を利用している(\dateを省略する場合も含む)場合は\和暦\西暦を明示的に宣言してほうがよいであろう。
  • それ以外のクラスについては、西暦表示が既定である。

それで結局令和できるのか

以前の記事の時点では一部のクラスは「令和」に未対応であった。しかし現在においては、和暦対応のクラスの全てが対応を済ませている。従って、最新のW32TeXでは明日の改元後に「令和」が出力される。

TeX Liveについては……、そう、ちょうど今朝(日本時間の午前7時頃)TeX Live 2019がリリースされた。従って、新しいTeX Live 2019をインストールすれば、和暦対応のクラスの全てで「令和」が出力される。ただし、国内のミラーへの反映に時間がかかるため、TeX Live 2019が一般に入手できるのは明日になるだろう。「令和」の時代の初日から「令和」が使えるようになる見込みである。

和暦なのか西暦なのか

実用上の必要はないだろうが、実は「現在\和暦\西暦のどちらが有効であるか」を判定することができる。

  • ifthenパッケージを読みこむ。和暦対応のクラスにおいては西暦という名の真偽値変数が定義された状態になるので、これを用いて判定ができる。

    \ifthenelse{\boolean{西暦}}{%
      % \西暦 が有効
    }{%
      % \和暦 が有効
    }
    
  • ただし、BXjsclsのクラスと欧文(pdf)LaTeXの組み合わせの場合は例外で、この場合は西暦の代わりにjsSeirekiという真偽値変数を用いる。(和文の変数名が使えないため。)

例えば次のようにできる。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,a4paper]{jsarticle}
\usepackage{ifthen}
\和暦
\title{新しいテフライブがリリースされた件}
\author{非ZR}
\begin{document}
\maketitle
\begin{abstract}
{\TeX}~Live \ifthenelse{\boolean{西暦}}{2019}{平成31}% ええっ
における変更点(特にアレ性)について解説する。
\end{abstract}
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190430144456p:plain
トッテモ実用的

Babelする場合は

Babelパッケージを利用する場合、\todayの表記はBabelの言語定義の内容に従うことになる。現在の版のBabelの日本語(japanese)用の定義では、和文クラスと同様に、\和暦\西暦命令がサポートされていて\todayの表記の切替ができる。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,a4paper]{jsarticle}
\usepackage[T2A,T1]{fontenc}
\usepackage{paratype}% PTフォント使用
\usepackage[prefercjkvar]{pxcjkcat}
% なぜか唐突にロシア語
\usepackage[main=japanese,russian]{babel}
\newcommand{\Ru}[1]{%
  \begin{otherlanguage}{russian}#1\end{otherlanguage}}
\和暦
\title{{\TeX}言語、ダメゼッタイ!\\
  \Ru{Никогда не делай {\TeX} язык!}}
\author{\Ru{не-ZR}}
\date{\today\quad(\Ru{\today})}
\begin{document}
\maketitle
% Ничего
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190430145337p:plain
Babelしてみた

BXwarekiパッケージ

Beamerなどのスライド用の文書クラスでは、和文も欧文も共通のものが使われるのが一般的である。そういうクラスでは当然、\today命令は和暦表示どころが日本語での表示にも対応していない。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[dvipdfmx,14pt]{beamer}
\usepackage{pxjahyper}% いつもの設定
\renewcommand{\kanjifamilydefault}{\gtdefault}
\usetheme{EastLansing}
\title{{\TeX}言語、ダメゼッタイ!}
\author{某ZR}
\date{\today}
\begin{document}
\begin{frame}
\titlepage
\end{frame}
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190430151243p:plain
日本語ですらない

日付が英語表記の「April 30, 2019」になっている。

このような文書クラスで\todayを和暦で表示したい場合は、bxwarekiパッケージを使うのが手っ取り早い2。bxwarekiは次の命令を提供する。

  • \warekitoday: 今日の和暦の日付を算用数字(平成31年4月30日)で出力する。
  • \warekikanjitoday: 今日の和暦の日付を漢数字(平成三一年四月三〇日)で出力する。
  • \warekijkanjitoday: 今日の和暦の日付を漢数字(平成三十一年四月三十日)で出力する。
% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[dvipdfmx,14pt]{beamer}
\usepackage{pxjahyper}
\renewcommand{\kanjifamilydefault}{\gtdefault}
\usepackage{bxwareki}% 和暦したい
\usetheme{EastLansing}
\title{{\TeX}言語、ダメゼッタイ!}
\author{某ZR}
\date{\warekitoday}% 和暦日付を明示指定する
\begin{document}
\begin{frame}
\titlepage
\end{frame}
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190430152742p:plain
平成できた

さらに、\warekicustomdateという命令を使うと、日付3を様々な形式で出力することができる。だから実は「西暦の日本語の日付」を出力したい場合にも使える4

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[dvipdfmx,14pt]{beamer}
\usepackage{pxjahyper}
\renewcommand{\kanjifamilydefault}{\gtdefault}
\usepackage{bxwareki}
\usetheme{EastLansing}
\title{{\TeX}言語、ダメゼッタイ!}
\author{某ZR}
\date{\warekicustomdate{}}% 和暦じゃない
\begin{document}
\begin{frame}
\titlepage
\end{frame}
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190430154226p:plain
西暦できた(えっ)

まとめ

というわけで、和暦したい人も、西暦したい人も、困った場合はbxwarekiパッケージを使おう!


  1. すなわち以下のクラス:ltjarticle、ltjreport、ltjbook、ltjtarticle、ltjtreport、ltjtbook

  2. 先述の通り、Babelを読み込んでメイン言語にjapaneseを指定すると\和暦が使えるので、こちらを利用する方法もあり、また(Babelの目的が多言語対応なので)その方がある意味で正攻法なのであるが、Babelは副作用も多いので、できるならば避けたいところである。

  3. \warekitoday等は必ず今日の日付を出力するが、\warekicustomdateは予め\warekisetdate命令で指定した日付を出力する。ただし、\warekisetdateの初期値は今日の日付であるので、\warekisetdateを使わない場合は\warekicustomdateの出力も今日の日付になる。

  4. \warekicustomdateの書式指定の文字列を引数にとる。引数が空の\warekicustomdate{}は西暦・算用数字で出力する。この他に、例えば\warekicustomdate{wk}だと和暦・漢数字(\warekikanjitodayと同じ書式)で出力する。

TeXで昭和してみるテスト

もしかして:令和

以下の結果は最新(昨日の版)のW32TeXでのもの。

TeX Liveについては、現在は2019のプレテスト中である。

\today の和暦表示で昭和してみるテスト

TeXエンジンのSOURCE_DATE_EPOCHの機能を用いて「現在日時が1983年8月8日である」と見なされるようにする。

# 以下の環境変数を設定する
set SOURCE_DATE_EPOCH=429148800
set FORCE_SOURCE_DATE=1

BXjsclsのクラスの場合

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,dvipdfmx,ja=standard,a4paper]{bxjsarticle}
\和暦
\title{できる! ネ申Multiplan活用術}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429143843p:plain
bxjarticleな出力結果

昭和!

jlreqクラスの場合

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[paper=a4]{jlreq}
\和暦
\title{できる! ネ申Multiplan活用術}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429143855p:plain
jlreqな出力結果

昭和!

jsclassesのクラスの場合

% pLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{jsarticle}
\和暦
\title{できる! ネ申Multiplan活用術}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429143904p:plain
jsarticleな出力結果

昭和!

pLaTeX標準和文クラスの場合

% pLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{jarticle}
\和暦
\title{できる! ネ申Multiplan活用術}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429143915p:plain
jarticleな出力結果

昭和!

LuaTeX-jaのクラスの場合

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ltjsarticle}
\和暦
\title{できる! ネ申Multiplan活用術}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429141949p:plain
ltjsarticleな出力結果

昭和!

※ltj系列のクラスでも同様。

Babelする場合

Babelパッケージを利用する場合、\todayの表記はBabelの言語定義の設定に従う。\和暦もサポートされている。

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ltjsarticle}
% なぜか唐突にラテン語
\usepackage[main=japanese,latin]{babel}
\newcommand{\La}[1]{%
  \begin{otherlanguage}{latin}#1\end{otherlanguage}}
\和暦
\title{できる! ネ申Multiplan活用術\\
  \La{Multa Nemōsuia Multiplāna faciāmus!}}
\author{nōn-ZR}
\date{\today\quad(\La{\today})}
\begin{document}
\maketitle
% nihil
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429144452p:plain
babelな出力結果

昭和!

bxwarekiパッケージ

例えばBeamerクラスはそもそも和暦に対応してないが、bxwarekiパッケージ\warekitoday命令を使うことで今日の日付を和暦で出力できる。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[dvipdfmx,14pt]{beamer}
\usepackage{pxjahyper}
\renewcommand{\kanjifamilydefault}{\gtdefault}
\usepackage{bxwareki}% 和暦したい
\usetheme{EastLansing}
\title{できる!\\ネ申Multiplan活用術}
\author{非ZR氏}
\date{\warekitoday}% 明示指定する
\begin{document}
\begin{frame}
\titlepage
\end{frame}
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190429144515p:plain
bxwarekiな出力結果

昭和!

まとめ

どうやら、イマドキの日本語LaTeXは昭和できるらしい。

TeXで令和してみるテスト(2)

前回の続き。

W32TeXの最新版による。

令和な組文字を書いてみるテスト

「令和」の組文字(U+32FF)をイロイロな方法で入力してみて、正しく出力されているかを調べる。

当然、U+32FFに対応したフォントが必要になるわけであるが、今回は「和田研中丸ゴシック2004絵文字」を使用する。ただし、このフォントは組文字の縦組用字形には対応していないので、縦組のテストは行わない。

※「和田研中丸ゴシック2004絵文字」はTrueTypeグリフのフォントである1

upLaTeXの標準和文フォントの場合

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,dvipdfmx,a4paper]{jsarticle}
\usepackage[ipaex]{pxchfon}
\setminchofont{wlcmaru2004emoji.ttf}% 和田研中丸ゴシック
\begin{document}
%↓先頭にU+32FFの文字
㋿ゃーん(\symbol{"32FF}ゃーん)
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190407045725p:plain
標準な出力結果

令和!

pLaTeX+japanese-otfの場合

最新のjananese-otfパッケージでは、\ajLig{令和}でU+32FFを入力できる2

% pLaTeX文書
\documentclass[dvipdfmx,a4paper]{jsarticle}
\usepackage{otf}
\usepackage[ipaex]{pxchfon}
\setminchofont{wlcmaru2004emoji.ttf}% 和田研中丸ゴシック
\begin{document}
\UTF{32FF}ぁ? \CID{23058}ぁ? \ajLig{令和}ぁ?
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190407045800p:plain
japanese-otfな出力結果

令和!

upLaTeX+japanese-otfの場合

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,dvipdfmx,a4paper]{jsarticle}
\usepackage{otf}
\usepackage[ipaex]{pxchfon}
\setminchofont{wlcmaru2004emoji.ttf}% 和田研中丸ゴシック
\begin{document}
%↓先頭にU+32FFの文字
㋿っ! \UTF{32FF}っ! \CID{23058}っ! \ajLig{令和}っ!
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190407045843p:plain
japanese-otfでupLaTeXな出力結果

令和!

pxchfonで“Unicode直接指定”にした場合

pxchfonパッケージで“Unicode直接指定”(unicodeオプション)を使うとフォントに関する内部処理が大きく変更される3ので、この場合もテストしておく。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,dvipdfmx,a4paper]{jsarticle}
\usepackage{otf}
\usepackage[ipaex,unicode]{pxchfon}% Unicode直接指定
\setminchofont{wlcmaru2004emoji.ttf}% 和田研中丸ゴシック
\begin{document}
%↓先頭にU+32FFの文字
㋿っ! \UTF{32FF}っ! \CID{23058}っ! \ajLig{令和}っ!
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190407045915p:plain
japanese-otfでunicodeな出力結果

令和!

jlreqクラスする場合

jlreqクラスでは独自の和文VFが使われるので、念のためこれも試してみよう。

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[paper=a4]{jlreq}
\usepackage[ipaex]{pxchfon}
\setminchofont{wlcmaru2004emoji.ttf}% 和田研中丸ゴシック
\begin{document}
%↓U+32FFの文字がたくさん
㋿㋿㋿㋿ーン
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190407045936p:plain
jlreqな出力結果

令和!

まとめ

まあ、LaTeX文書で元号の組文字を使う人なんていないだろうから、別にドウデモイイネ。


  1. 標準のフォントマップ設定(所謂“CMap指定”)の場合、AJ1対応のOpenTypeフォントよりもTrueTypeフォントの方が正常に出力するのが“難しい”。

  2. 実際には\ajLig{令和}はAJ1のCIDを利用して文字を出力している。AJ1-7において、「令和」の組文字は横組がCID 23058、縦組がCID 23059に割り当てられている。従ってこの場合、\ajLig{令和}\CID{23058}と等価になるが、フォントがAJ1対応でない場合、CID 23058・23059の指定は何れもUnicodeのU+32FFの指定に(dvipdfmxの内部処理において)フォールバックする。

  3. この場合、CID 23058・23059は和文VFを用いて明示的にUnicodeのU+32FFに変換されている。“Unicode直接指定”であるため「UnicodeのU+32FFのグリフ指定」がそのまま適用される。

TeXで令和してみるテスト(1)

以下の結果は最新(今日の版)のW32TeXでのもの。

TeX Liveについては、現在は2019のプレテスト中である。TeX Live 2019のリリースの予定日は4月30日であるので、新元号への対応を済ませたTeX Liveは連休明けの頃には一般に入手可能になっていると思われる。

\today の和暦表示で令和してみるテスト

TeXエンジンのSOURCE_DATE_EPOCHの機能を用いて「現在日時が2019年8月8日である」と見なされるようにする。

# 以下の環境変数を設定する
set SOURCE_DATE_EPOCH=1565222400
set FORCE_SOURCE_DATE=1

BXjsclsのクラスの場合

% upLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,dvipdfmx,ja=standard,a4paper]{bxjsarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\subtitle{~新時代の{\TeX}言語教科書~}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190406111821p:plain
bxjarticleな出力結果

令和!

jlreqクラスの場合

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[paper=a4]{jlreq}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190406111936p:plain
jlreqな出力結果

令和!

jsclassesのクラスの場合

% pLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,a4paper]{jsarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190406112016p:plain
jsarticleな出力結果

アレ!

LuaTeX-jaのクラスの場合

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ltjsarticle}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190406112038p:plain
ltjsarticleな出力結果

アレ!

Babelする場合

Babelパッケージを利用する場合、\todayの表記はBabelの言語定義の設定に従う。現在の版のBabelの日本語(japanese)用の定義では和暦がサポートされていて、jsclassesと同様に、\和暦命令で日本語用の\todayの表記が和暦に切り替わる。

% LuaLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[a4paper]{ltjsarticle}
% なぜか唐突にエスペラント
\usepackage[main=japanese,esperanto]{babel}
\newcommand{\Eo}[1]{%
  \begin{otherlanguage}{esperanto}#1\end{otherlanguage}}
\和暦
\title{しあわせ{\TeX}言語入門\\
  \Eo{Feliĉa Kurso pri la Lingvo {\TeX}}}
\author{mal-ZR}
\date{\today\quad(\Eo{\today})}
\begin{document}
\maketitle
% Neniu enhavo.
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190406112249p:plain
babelな出力結果

令和!

bxwarekiパッケージ

文書クラスが新元号に非対応(あるいはそもそも和暦に非対応)であっても、bxwarekiパッケージを使用すると正しい和暦表記が得られる。\warekitoday命令で今日の日付が和暦で出力されるので、明示的に\date\warekitodayを指定すればよい1

% pLaTeX文書; UTF-8
\documentclass[uplatex,a4paper]{jsarticle}
\usepackage{bxwareki}% 和暦したい
\title{しあわせ{\TeX}言語入門}
\author{非ZR氏}
\date{\warekitoday}% 明示指定する
\begin{document}
\maketitle
% 中身はまだ無い。
\end{document}

f:id:zrbabbler:20190406112105p:plain
bxwarekiな出力結果

令和!

まとめ

というわけで、もしアレだった場合はbxwarekiを使おう。


  1. bxwarekiパッケージは\todayの出力に関しては何の影響もおよぼさない。