非 TeX ユーザーの TeX をめざして
――TeX 総合支援ツールとしての KETpic の利用
北原清志 (工学院大学)
図入りの数学教材を TeX で簡単に使いたい人は KETpic を使いましょう!
補足してみる
- 数学の教育において、図を用いることは理解の状況を改善する上で非常に大切だ。言葉だけでは解らなくても、図を見れば「感覚的にわかる」(「アハ体験」的に)ことはよくある。しかし残念ながら、図の入った教材は非常に少ない。その理由は単純に正確な図を作成する手間が非常に大きいからだ。このような状況を改善するのが KETpic の目的である。
なにか書いてみる
- 毎度おなじみ KETpic。まあ、発表者が絶対的に不足している現状では、こういう存在は有難いものであるはず。
- KETpic による高度な描画機能は「TeX で組版するからといって全部 TeX でやる必要はない」という思想の良い具体例になっている。
- 最近は「TeX 総合支援ツール」の題目が示す通り、「LaTeX での多少複雑な処理について、KETpic のユーザから見てもっと自然な方法を提供する」という方向を模索しているようにみえる。
- 高度な描画を目当てに KETpic を使っているユーザは既に CAS の言語について慣れ親しんでいて、多くの場合、それは TeX や LaTeX よりも洗練された文法を持っている。だから、「KETpic ユーザである」ことを前提とするなら、その使いやすい文法で記述できた方がよい、という発想が暗黙的にあるのだと思う。
- layer 環境というのは、CAS とは無関係で純粋に TeX で実装されているようだ。
- 「本文中のある領域で、要素のレイアウトを完全に自由に決定したい」という場合、標準の LaTeX の場合は picture 環境を用いればよい(グリッド表示はは epic パッケージの
\grid
命令を用いる((eepic ではなく epic なので tpic special は無関係。実際、overpic パッケージは単に\includegraphics
と picture 環境と\grid
を組み合わせているだけである。)))のが定石であるが、これはあまり知られていない気がする。 - だから専用の環境を用意するというのは妥当なのであるが、そこで従来の picture(や拡張の pict2e)とは全く異なる命令セットを用意するというのは何となく気持ち悪い。*1
- 「KETpic は tpic special を直書きしているので tpic をサポートしない pdfTeX/LuaTeX では使えない」というのはずっと気になっていたのだが、最近になって、描画に pict2e を使う版が開発されたようだ。
質疑応答
- Q: Maple と Mathematica 以外(Maxima 等のフリーの CAS ソフトウェア)への対応は進んでいるのか?
- A: 現在では、どの機能も全ての対応ソフトウェアで使える。(← という答えだったはず。)
- それにしても、複数の CAS ソフトウェアへの対応ってどうしているのだろう。「共通化」ができなさそうだけど、一つずつ別箇に行っているのかな。
- Q: 同じ図に対して「モノクロ」と「カラー」で出力を分けることができるか?
- A: カラー出力には対応していて、モノクロとの出しわけについては…(←答えが聞き取れず。)
- color パッケージの monochrome オプションでは対応できないのかな。
- ある領域で、カラーでは色のベタ塗りでモノクロでは斜線を入れる、とかはどうしよう。
- Q: emath パッケージの描画機能との違いは何か?
- emath は図の作成の計算をすべて TeX 上で行う必要がありあまり複雑な(数学的な)図を描くようにはできない。あくまで「TeX だけでできるレベル」のことをサポートするためのものである。
*1:KETpic 自体は CAS の言語上で記述するので、それと整合させているという訳でもなさそう。