念のため補足しておくと、ソースの書き方が変わるのは「LaTeX での TeX プログラミング」の部分であって、LaTeX 文書の書式(\begin{document}
とか \section
とか)は変わらないと思われる。ただ、もしかすると、先頭の \documentclass
は「LaTeX3 の文書である」ことを明示するために変更されるのかもしれない(LaTeX 2.09 と 2e の違いのように)。
私が未来の LaTeX に期待しているのは、「文書作成言語(マークアップ言語)」と「パッケージ作成用プログラミング言語」の中間に「文書クラス作成用言語」が存在して、それは TeX 言語やプログラミングの知識がなくても容易に習得できる(すなわち誰でも自分の文書クラスが作れる)という状態である。
元々 LaTeX は「文書作成者がレイアウトについて考える必要を無くす」ために「文書の内容とレイアウトを分離」している。すなわち、LaTeX で文書を作成する場合、まず既存のレイアウト(=文書クラス)から自分の要望に適ったものを選んで、あとは自分が著した文章をそのレイアウトに従って組版するという過程をとる。(PowerPoint の「スライドのデザイン」と同じである。)繰り返すが、jsarticle 等の「文書クラス」は「文書レイアウトの設定」そのものであり、決して「章のない文書」だけを表すのではない。従って、「jsarticle の作るレイアウトに合わない組版をしたい」という要望は、すなわち「jsarticle でない文書クラス」を要していることを意味する。
とはいっても、現実として、汎用的(何らかの論文誌や大学専用でない)な文書クラスというと、欧文用のものは CTAN を探せばいくつか見つかるが、和文に関しては、事実上、奥村氏の「JSクラス(jsarticle 等)」の一択しか存在しない。(標準の jarticle を使うぐらいなら jsarticle の方を使うべきなので。同じ理由で、縦書きについては完成した文書クラスがそもそもないことになる。)従って、レイアウトを変更したい(=文書クラスを作りたい)と考える人が多いのも自然である。
ところが、現在の LaTeX2e では、文書クラスを記述する言語は「パッケージ作成用プログラミング言語」と同じものであり、それは「TeX 言語 + 大量の LaTeX2e の内部マクロ」である。結果として、「難解な」TeX 言語に耐えられる人以外は敢えなく挫折することになる。しかし、実際には、文書クラスの記述には「パッケージ作成用言語」の高い処理能力を必要としないことが多い。だから、「文書クラス作成用言語」があって、文書クラスは原則的にそれで記述される(それで間に合わない部分はパッケージとして分離する)という習慣が確立されれば、文書クラスを解読と作成がより多くの人が実行できるようになると考えるのである。