以前の記事で、「TeX 言語を学習するための資料」について紹介した。しかし、プログラミング言語というものは、ただ座学で資料を読んでいるだけではなかなか身につかないものであり、熟達には「実際にコードを書く」という作業が不可欠である。
「自分が必要なものを自分で実装して学習する」というアプローチは多くの場合に有効である。ところが、特に「LaTeX の機能拡張のために TeX 言語を学習している」という人の場合、実際に対処する要件はそれほど複雑なコーディングを必要としない場合がほとんどであり、それゆえ、TeX 言語の「高度な技術」は結局何時まで経っても習得できないという問題があるだろう。この問題を解決する有効な手段の一つとして「当該の言語で LISP 処理系を実装する」というアプローチが昔からよく知られている。*1
LISP 処理系の実装には十分慣れているが、TeX 言語については初心者だ、という人にとっては、既存の LISP 実装についての解説文書が大いに役に立つであろう。LaTeX 上で動作する既存の LISP 実装として lisp-on-tex パッケージ(CTAN・TeX Liveに収録済)があるが、この作者である hak7a3 氏が自身のブログにおいてその実装について解説している。その一連の解説記事が先日完結したようなので、まとめてここで紹介しておく。
- LISP on TeXを作る(データ構造編)(2013-12-24)
- LISP on TeXを作る(パーサ編)(2014-01-13)
- LISP on TeXを作る(評価器編1)(2014-04-06)
- LISP on TeXを作る(評価器編2)(2014-05-17)
TeX の世界に幾多の個性的な LISP 実装が現れることを期待したい。
*1:ただし、私自身はこの方法の効果については何も保証する者ではないことを注意しておく。