マクロツイーター

はてダから移行した記事の表示が崩れてますが、そのうちに直せればいいのに(えっ)

100万回ハローワールドするTeX言語的な方法

とあるプログラミング言語1が超絶アレなためムシャクシャしたので、チョットTeX芸してみた。

[↓お題]

[↓結果🙃]

※上記のプログラムはplain TeX用のものである。texコマンドでコンパイルするとDVIファイル、pdftexコンパイルするとPDFファイルが得られる。以下、この記事で扱うコードはplain TeXを前提とする。

とりあえず

なるべくTeX言語特有の変態な方法を使う

という方向性にこだわってみた。

参考:フツー(?)の方法

なお、元ネタで使っている方針はもちろんTeX言語でも使える。TeX言語チョットデキル人であれば思いつくであろう2

\let\z.\def~{\z}\def\y{\edef~{~~~~~~~~~~}}\y\y\y\y\y\y
\def\z{Hello world!\par}~\bye

TeXを対話モードで使っていて「反復処理を書きたい」という場合に、このパターンを実際に使うことがたまにある。(TeXでループを書くのは面倒なので。)

変態な方法

{\catcode`\m=\active\gdefm{\hbox{Hello world!}$\par$}}
\mathcode`m="8000$\romannumeral1000000000\relax$\bye

ポイントは\romannumeral1000000000である。ローマ数字で“10億”を出力しようとしているが、(TeXの)ローマ数字で最大の数字は“m=1000”なので、結果的にTeXはこのコードをmを100万個並べた文字列に展開する。これでループ的な実行制御なしで“同じトークン100万個”を得ることに成功した🙃

ただしこのmのカテゴリコードは123なので、このままでは“m”以外のテキストを出力するのには使えない。カテゴリコードが12の文字トーク4でマクロを実行させたい……となると、math-acriveを使うことが考えられる。

文字のmath codeを"8000に設定することを“math-active”という5。文字をmath-activeにすると、数式モード中で当該の文字の(カテゴリコードが11または12の)文字トークンが実行されたときに「代わりにその文字のアクティブ(カテゴリコード13)な文字トークンが実行される」という動作になる。標準のplain TeX(やLaTeX)では数式モード中での'の入力でプライム記号(\prime)が上添字として出力されるが、この挙動は'をmath-activeにすることで実現している。

今の場合はmの入力で“Hello world!”を出力させたいので、アクティブなmにマクロを定義した上で\mathcode`\m="8000を設定する。その上で、数式モードに入って\romannumeral1000000000を実行すればよいことになる。ただし数式モードに入るのは飽くまでmath-activeのためで文字列自体は非数式で出力したいなので\hboxを使う。さらに「数式モード中では改段落ができない」のを回避するために「一旦数式モードを終結してから改段落してまた数式モードに入る」という対策をとった。

まとめ

新しいテフライブが無事にリリースできるといいですね😊(まとめろ)


  1. ただしTeX言語以外😲
  2. 先頭の\let\z.は「\zを(一時的に)展開不能にする」ために入れている。1行目を実行した時点で~の意味は「\zを100万個並べたもの」に展開されるマクロになる。
  3. \romannumeralの展開結果は\the文字列なのでこのmのカテゴリコードは11ではなく12である。
  4. e-TeXを前提するなら\scantokensを使うという手段もありそうだが、これは実際にやってみると\scantokensのバッファが100万文字に耐えられずに失敗した。
  5. もしかしたら“math-active”はオレ用語なのかもしれない🙃

Typstで“calc.abs(-8)”はメソッド呼出なのか

Typstのメソッド呼出を完全に理解する話

Typstの一部の型はメソッドをもつ。例えばarray型の値は自身の長さ(要素数)を取得するためのlen()メソッドをもっている。

#let ary = (1, 2, 3)
#ary.len() //==> 3

ここで注意すべきなのは、これはary,lenという(function型の)フィールドに関数呼出の括弧を付けたものではない、ということである。実際、array型の値aryにはary.lenというフィールドは存在しない1

#ary.len //--> error: cannot access fields on type array

Typstにおいてフィールドの参照とメソッドの参照が異なる概念であることはdictionary型をみればさらに明らかになる。以下の例をみてわかるように、フィールドとメソッドの空間は全く別になっている。

#let dict = (foo: calc.abs, len: 42)
#dict.len     //==>42
#dict.len()   //==>2
#dict.foo     //==>abs (function値の表示)
#dict.foo(-8) //-->error: type dictionary has no method `foo`
#dict.keys    //-->error: dictionary does not contain key "keys"
#dict.keys()  //==>("foo", "len")

ということは、Typstではval.name(...)という形2の式は「メソッド呼出」を表すものであり、これとval.nameの形の「フィールド参照」とは全く別のものである、といえそうである。もし「フィールドのfunction値を呼び出す式」を書きたいのなら、val.name(...)という“形式”を回避する必要があり、簡単な方法としてはval.nameの部分に括弧を付ければよい。

#(dict.foo)(-8) //==>8 ('calc.abs(-8)'の値)

“メソッド呼出の意味論”についてはTypstの公式のドキュメントに説明がある。

すなわち、val.name(...)というメソッド呼出はtype(val).name(val, ...)と等価になる。先の例でdict.len()type(dict)dictionary3であるので次の式と等価になり、これは実際に2を返す。

dictionary.len(dict)

Typstのメソッド呼出がなにもわからない話

ところで先のdictionaryの例でcalc.absという関数を使った。これは組込のcalcモジュール(module型の値4)に属している関数で、数値の絶対値を返すものである。通常はcalc.absに関数呼出の括弧を付けて使う。

#calc.abs(-8) //==>8

何の変哲もないコードであったはずだが、ここで先の考察を踏まえるとある疑問が湧いてくる。このcalc.abs(-8)というのは「メソッド呼出」なのであろうか?

この式はまさにval.name(...)という形なので形式の上ではメソッド呼出のはずである。ただし先のdictionaryやarrayの話と決定的に異なる点がある。calc.absは実際にcalcのフィールドとして存在するのである。これはcalc.absの部分に括弧を付けても呼び出せることからわかる。

#(calc.abs)(-8) //==>8

これを踏まえるとcalc.abs(-8)は「calc.absというフィールド値に関数呼出の括弧を付けた式」でありメソッド呼出でない気がしてくる🤔

やっぱりメソッド呼出でありそうな話

こういう関数を考える。

#let call-len(val) = val.len()

Typstは動的型の言語であるため、valの型は実行時にしか決まらない。もしここで、valにarrayの値とmoduleの値のどちらも受け付けるのであれば、val.len()という1つの式が成立する以上「calc.abs(-8)ary.len()とは異なる構文である」ということはありえないことになる。実際に確かめてみよう。

[mod.typ](len()という関数をもつモジュール)
#let len() = 42
[main.typ](このファイルを実行する)
#import "mod.typ"
#let call-len(val) = val.len()
#let ary = (1, 2, 3)
#let dict = (foo: calc.abs, len: 42)
#call-len(ary)   //==>3
#call-len(dict)  //==>2
#call-len(mod)   //==>42

“期待通り”の結果になった。ということは、やっぱりcalc.abs(-8)はメソッド呼出である……?🤔🤔

やっぱりメソッド呼出でなさそうな話

calc.abs(-8)がメソッド呼出であるなら、先ほど紹介した“メソッド呼出の意味論”を満たすはずである。つまり、type(calc)moduleであるからcalc.abs(-8)は以下と同値になる。

module.abs(calc, -8)

つまり、module(type値)にはmodule.absというフィールド5がありその値は「引数のモジュールのabsフィールドの関数を呼び出す」という役割をもった関数、ということになる。もちろんモジュール内の関数名には任意の識別子が使えるので、この理屈に従うと「moduleにはありとあらゆる名前のフィールドが定義されている」というオソロシイことになる。まあ論理的にありえない話ではないので、実際に確かめてみよう。

#module.abs           //-->error: type self does not contain field `abs`
#module.abs(calc, -8) //-->error: type self does not contain field `abs`

どうやらそんなオソロシイ話はなかったようである😊 でもこれだとやっぱりcalc.abs(-8)はメソッド呼出ではない……?🤔🤔🤔

Typstのメソッド呼出がチョットデキル話

なにもわからなくなったので、処理系の実装をみてみよう。

詳細の説明は(メンドクサイので🙃)省くが、やはり、val.name(...)の形式の式の実行においてはvalの型によって解釈を変えているようである。

  • valの型がsymbol、function、type、moduleの何れかである場合6は、フィールドval.nameの値に対する関数呼出と解釈する。
  • それ以外の場合は先述の“メソッド呼出の意味論”に従う。

つまり結論としては:

  • val.name(...)val.nameとは全く別の構文である。
  • しかしvalの型によって「メソッド呼出」になったり結局「val.nameの関数呼出」になったりする。
  • calc.abs(-8)は後者に該当するので「メソッド呼出」ではない

まとめ

皆さん、そんな細かいことは一切気にせずに、どんどんTypstしましょう😃


  1. そもそも、array型の値はフィールドを一切持っていない。
  2. nameは単一の識別子に限るが、valの部分は任意の式でよい。
  3. つまり、トップレベルでdictionaryとして定義されているtype型の値。
  4. 意外かもしれないがTypstではモジュールは第一級値(first-class value)である。
  5. valがtype値である場合のval.name()は(module値であるときと同様に)フィールドのval.nameの関数呼出と同じ動作になる。例えばdictionary.lenというフィールドは実際に存在する。
  6. 本当はこの場合でもtype(val).nameのフィールドが存在する場合は“メソッド呼出の意味論”が優先されるようである。ただ型の性質を考える限り、この4つの型にメソッドが設定される可能性はほぼなさそうである。

2024年のパズル年賀状

今年の年賀状。

以前に述べたとおり、年賀状にはその年の数に関連した数学パズルを載せるのが通例である1。去年も割と余裕をもってパズル問題を作ることができて、結局(例によって)チョット変わった虫食い算になった。

肝心のパズル問題の部分の文字が(例によって)小さくで読みづらいが、以下のように書かれている。

次の条件に従って掛け算の虫食い算を解きなさい。

  •  の 6 マスおよび  の 6 マスはそれぞれ 6 面ダイス(立方体のサイコロ)の展開図になっている。

※ 6 面ダイスの向かい合う面に書かれた数の和は 7 でなければならない。

(問題の図)

一番上にあるのはベトナム語(ただしチュノム😲)での新年の挨拶。


  1. Typst用の文書テンプレートの開発に時間を取られている人が多いためか、年を追うごとに年賀状で数学パズルを見ることが少なくなっているようで感じる。

“TypstでTeXのロゴ”とか暮れのごあいさつとか

Typstで“TeXロゴ”したい話

以前に“TeXのロゴ”について記事を書きました。

この記事では、“TeXロゴ”の熱狂的なファンがTeX以外で正しい“TeXロゴ”を出力する方法について解説しています。具体的にはHTML+CSSおよびMicrosoft Wordを扱っています。

Wordで“TeXロゴ”する様子

今世間で話題になっている“TeX以外”といえば、やっぱりTypstですね。熱狂的なファンであれば、当然Typstでも“TeXロゴ”(および“LaTeXロゴ”)を使いたいところです。

※ちなみに、SATySFiにおいては標準ライブラリのpervasiveにおいて“TeXロゴ”と“LaTeXロゴ”を出力するための\TeX命令と\LaTeX命令が提供されています。

Typstで“TeXロゴ”してみた話

というわけで、つくってみました。

[texloog0.typ]
#let TeX = {
  [T]; "\u{2060}"
  box({h(-0.1667em); box(move(dy: 0.2153em)[E]); h(-0.125em)})
  "\u{2060}"; [X]
}
#let LaTeX = {
  [L]; "\u{2060}"
  box(style(styles => {
    let size = measure([T], styles)
    h(-0.36em)
    box(height: size.height, {text(size: 0.7em)[A]})
    h(-0.15em)
  }))
  "\u{2060}"; TeX
}

このtexloog0.typをライブラリとしてインポートします1

#import "texloog0.typ": *

これにより次の2つの値2が使えるようになります。

  • TeXTeXのロゴ(content値)。
  • LaTeXLaTeXのロゴ(content値)。

もちろんTypstのマークアップモードの中で使う場合には#TeX;のように書くことになります。以下で簡単なサンプルを示します。

#import "texlogo0.typ": *
#set text(font: "Harano Aji Mincho")

#TeX;言語は超絶アレ、#LaTeX;は微アレ。

☃は非アレ。

この文書をコンパイルすると以下の出力が得られます。

出力結果

無事にTypstで”TeXロゴ”できました(幸せ😊)

まとめ

今年も一年、ありがとうございました!

除夜のカントカ

ZR「というわけで、来年も当(くだらない)ブログをよろしくお願いします!」
*「アレレ、ネタ画像が完全に2年前の使い回しだ😲」
ZR「………………3


  1. 最後の*は「全てインポート」を表すもので、例えばこれをTeXに変えると#TeXだけがインポートされます。
  2. TeXLaTeXはcontentを返す関数ではなくcontent値そのものです。
  3. チョット変えたとしても誰の得にもならないので、ここは省力化することにしましょう🙃

今年も Merry TeXmas! ― \end{texadvent2023}


TeX & LaTeX Advent Calendar 2023
*  *  *

アドベントカレンダー完走!

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-45886688758823188232882338850972086667109289025595801777770600081308710
+88231885059520663304283186539094925899696529553504406871601717178172108
-88794488238823188488238823288238823388298850699868069817901780806811808
+88758869882332887588698823228875588232885083874655954871007111180142100
+88231882338850387852755197760761265569092407858099695817891780861306510
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+88758823882328874887558823882318850056682580903680690808986606868689868
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+88238823288748875887488748875885036216936908506049916910516911110677760
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-88645886188658869886588678835885808933583809933352526813625387374994362
-88674488231882328823388298835882328835887588231883588505692809580493989
-88638838865886188645882314488585031324335329357483651358323290968691483
-58865488638838865886188645883588298875889885856012465773851629847463189
-88734488488678824887588648834882988754882226883418850555256096407586804
+88748875412388349887543388754928875588210882688214886188988748821032885
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+68875504619629882604588666188266288748874040887244618821626388299629885
+88758890887244884882887588648861882904076179088638838865886188645618858
-58865488638838865886188645904096162908861488688618865886350062078875885
+88288638863880457882232000788758828808877588288638861887357882604619885
+29887490039090290901209012090610903300970908879447090887144309088774406
-40890458866988758869088692040887561790788758877488666179040887190440887
+88299040446188299088758875882886988758873588288618875887278826618874904
-88766149088218873588758838826610088288670061000882088678874909088764406
-90880443007104058877614628829907887588988628808875880788758838806108862
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-88219088758863880887588288088288388758838861886388758871702009090886702
-40488766149088218873588758838826610088288678874909088793090887770408862
+98862887588779090887210408826619078875889883887588188698875887776108869
-58870248867882990908873104048872614628829907887588288088775887276108862
-58870240788758898838875881886988758877731088620886662882990400988219885
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+78890088618875887310288250230603012088628875410210013080488788260504882
+32024575151515251515151525151515150150153515153501882904887231024565605
+56503501525015250188290488723020245751515351515153515151565151535015205
+50188290488722902458826102887452565882610288745015015250188290488722885
-30245651515153515151515251515151565065151501515188290488203024502515305
+52515151515250152515151515015015251515151535151535151518829048872702885
+45025252525650150156501525650152501882904887260245025252525151515015105
+51506575151535151515350152515151882904882060245025252525650150150350105
+56515151515253882904882010245025351525151515152501501503501515151515205
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+10150115135012588635125013510250135750101588635015016565016503501658863
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+16501035886351650165101501015106501358863516501252153065225533588635523
+31521530252025315886358862882988740804883882604418825395887751508898858
+88290886025025024048876151514044060257258864560157257656065765060658863
+76506157250175675010158863579501150301532503015206588635030151357065503
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+20300024044020002000103020036020088725008866882904887105188250300020002
+18825030020602009024048830881048871058824188250300020002001882503002302
+90240488308810488761008825790088253404887110002000200882410002000240705
+88658808869886545886588758873704887088108821887588788088758878874882905
-78875889887588737200360208862040498808828869886788698865908875887588904
+70244088758860470244088758875887886188675887886948875883885008060906960
+88758879708877420887588758878861886758875887958869886788508967777877780
+88758898875887370788758898875887372078838875889886988509599080078078976
+88758878808875886887588737078862880887588072887488586808059589700077780
-58865488582888288828882888288828882888288828882888202312258887777878878
(コンパイル方法)

というわけで、12回目の開催となる TeX & LaTeX Advent Calendar 2023 も、素敵なTeXネタを途絶えさせることなく無事にクリスマスの日を迎えられました。今年の参加者は全部で13名でした。参加者の皆様に心からの感謝を捧げたいと思います。

今年の重点テーマは「(La)TeXで幸せになる方法」でした。(La)TeXで何かが実現できればそれは当然幸せ😊になれます。そういうわけで比較的取り組みやすいテーマだったようで、重点テーマ絡みのネタが過去最高の19件1となりました😃

もしかしたら「TeXで幸せになるなんてケシカラン、TeXはやっぱり不幸😭を目指すべきである」という人も現れるかとチョット思っていたのですが、やっぱりクリスマス🎄の雰囲気に似合うのは不幸😭ではなく幸せ😊なのでしょう。トッテモ幸せ😊🤯なカレンダーができあがりました。

TeX & LaTeX Advent Calendar 2023 を楽しんでくれた皆さんに、

ありがとう!

そして


  1. 記事の文章の「本題に関係ある部分」が「幸せ」を含んでいるもの。

TeXでもTypstでもコンパイル可能なファイルを作りたい話

これは「TeX & LaTeX Advent Caleandar 2023」の12日めの記事です
(11日めは h20y6m さんでした。13日めは CareleSmith9 さんです)

結局12日目が埋まらなかったので、某ZRの小ネタ話になります(ざんねん🙃)

SATySFi以外の話

2021年のアドベントカレンダーTeX/LaTeXSATySFiの両埋め)にこんなネタがありました。

今回はSATySFiでなくTypstでやってみようという話です。まあ技術🌲的に目新しいことは何もないわけですが。

Typstを紹介する話

過去の某ツイーター記事をみましょう。

もっとマジメな説明を読みたいという人はこちらをどうぞ。

というわけで、今回はTeXとTypstのpolyglotをつくります。

TeXとTypstでいかにpolyglotするかの話

SATySFiのとき全く同じです。「LaTeXではどうやっても無理なので、plain TeXを使うことにして、強い裏技に頼る」ことにします。同じ方針で書くと、SATySFiのときとほぼ同様のものが完成するわけですが、さすがにそれでは退屈すぎるでしょう。

そこで今回は「なるべくコードを短くする」という条件を加える1ことにします。

TeXとTypstでpolyglotしてみた件

88バイトになりました。

Typst//\def~#1{\let~#1\def#1{\setbox0\box255\gdef#1{~}}}~\plainoutput\vfil\break\TeX\bye

plain TeX(例えばpdftex)でコンパイルしたときの出力。

TeXな出力

Typst2コンパイルしたときの出力。

Typstな出力

polyglotできてますね😃

まとめ

というわけで、枠が埋まらないとカレンダーがざんねん🙃になってしまうので、皆さん「TeX & LaTeX Advent Calendar 2023」にドンドン登録して幸せ😊になりましょう!💁


  1. その代わり、出力については「各処理系の既定のページ設定が適用された上で、本文領域に名前(“TeX”および“Typst”)だけが書かれていればよい」というルールにします。
  2. //はTypstの行コメントを開始する記法なので、Typstのコードとして見た場合は単に「Typst」と書いてあるだけです。“細工”は全てTeX側で行っています。

LaTeXでフツーの幸せな出力を得る方法

これは「TeX & LaTeX Advent Caleandar 2023」の☃日めの記事です
(7日めは CareleSmith9 さんでした。9日めは ujimushi at SradJP さんです)

今年のアドベントカレンダーの重点テーマは​「(La)TeXで幸せになる方法」​です。そもそもLaTeXは文書を作成するためのソフトウェアなので、「LaTeXで幸せになる」ための“正攻法”は「幸せな出力を得ること」になるでしょう。そして、LaTeXで手軽にできる​「幸せな出力」​と聞いて真っ先に思いつくものといえば、やっぱりコレでしょう。

ツイッタァー(現𝕏)のどっかの某氏🙃のアカウントを見に行けば見飽きるほど大量に豊富に貼られている​「いつものゆきだるま☃画像」​です(素敵😊)。

フツーの☃画像(素敵😊)

※説明の都合上、幸せと無関係な要素(🦆とか🙃とか)は除去しました。

……なのですが、ここで問題です

この画像を実際にLaTeXで作るにはどうすればよいでしょう?

※ツイッタァー(現𝕏)に上げているのはPNG画像ですが、PDF→PNGの変換は容易であるため、ここでは元の「PDFの画像(文書)」を作ることを問題にします。

とにかくフツーの☃画像してみる話

TikZしてscsnowmanしたら完成……しない話

一見するととても簡単な話に見えます。画像の背景は単純に色を塗っただけのものです。空の部分はグラデーションになっていますが、これもTikZで簡単に実現できそうです。単一のtikzpicture環境の中身をそのまま出力文書としたいのでstandaloneクラス1を利用しましょう。

% pdfLaTeX文書
% standaloneクラスを用いるので, tikzpicture環境の
% "中身"だけが文書として出力される.
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz}
\begin{document}
% 72dpiでビットマップ画像に変換した際に
% "TikZ座標の1単位=1ピクセル"
% になるように, 単位を1bpに設定する.
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
% 画像の大きさを強制的に指定する(480bp×360bp)
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
% 地面
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
% 空(下部はSkyBlue!5で中ほどから上に向かって色が濃くなる)
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
\end{tikzpicture}
\end{document}

このソースをpdflatexでタイプセットすると以下の出力が得られます。

背景の画像(非素敵😐)

完璧ですね!😃

あとはscsnowmanパッケージを追加して適当な位置に赤マフラーの☃を配置するだけです。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman}%ゆきだるま☃
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% 赤マフラーの☃を追加する(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

scsnowmanした結果(チョットアレ😰)

これで完成……アレレ、なんか☃が青ざめているようです😰 何が起こったのでしょうか?

scsnowmanでフツーに☃できない話

実は\scsnowman命令は既定では☃の中身を塗りつぶしません2。なので背景の空の色が見えてしまっているのです。(雪玉の中身についても同様です。)

とはいえ、\scsnowman命令にはいっぱいオプションがあったはずなので、恐らく「体の色」の指定もきっとできるでしょう。そう思ってマニュアルを見ると、bodyというオプションがあることがわかります。体の色を白にするために\scsnowmanのオプションにbody=Whiteを追加してみましょう。

% \scsnowman のオプションに"body"を追加
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, body=White,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown,
  snow=SkyBlue]};

bofy=Whiteを指定した結果(アレ😱)

アレレ、顔がなくなってしまいました😱

この理由は、bodyオプションを指定すると輪郭線の扱い3が変わるからです。具体的には「全体の輪郭線は描かれなくなりその内部の線(顔のパーツの線やマフラーの輪郭線など)は白で描かれる4」ようになります。顔のパーツと体が同じ色なので見えなくなったわけです。

bodyオプションがどういう効果をもっているかは白以外の色を指定してみればわかるでしょう。以下の画像はbody=Turquoiseを指定した結果です。

body=Turquoiseを指定した結果

それでは、当初考えていたように「輪郭線をフツーに描いて中身を白く塗りつぶす」にはどう設定すればいいのでしょうか。実は現状のscsnowmanパッケージはこの設定をサポートしていません。フツーの☃画像を出力して幸せになるのは案外大変なようです😧

それでもフツーの☃画像したい話

というわけでここからが本題です。scsnowmanパッケージをフツーに使うだけではフツーの☃画像が作れないことがわかりました。フツーの☃画像を作って幸せになるにはどうすればいいでしょうか。ここでは3つの解決策を紹介します。

方法①:scsnowman+パッケージを使う

実はこの​「色指定の自由度がチョット足りない」​という問題は、3年前の「TeX & LaTeX Advent Calendar 2020」の記事で既に指摘されています。

そして、その記事の筆者により作製された「scsnowmanを拡張するパッケージ」であるscsnowman+ パッケージが公開されています。

scsnowman+ パッケージを読み込むと、\scsnowman命令が拡張されて「*-形」である\scsnowman*が使えるようになります。この\scsnowman*では「体の塗りつぶしの色を指定する」ためのbodyfillや「雪玉の塗りつぶしの色を指定する」ためのsnowfillなどの追加のオプションを指定して色をもっと自由に設定できるようになっています。

今回は体と雪玉を白く塗りつぶしたいのでbodyfill=White, snowfill=Whiteとオプションを指定しましょう。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman+}%ゆきだるまプラス☃
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% 拡張された"\scsnowman*"命令でフツーの☃を出力(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman*[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue,
% bodyfill, snowfill オプションを設定
  bodyfill=White, snowfill=White]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

scsnowman+ で☃した結果(素敵😊)

フツーの☃画像が完成しました(幸せ😊)

方法②:scsnowman-libを使う

ところで、どっかの某氏🙃は飽きもせず延々とフツーの☃画像を流し続けているわけですから、どっかの某氏🙃も何らかの手段を持っているはずです。どっかの某氏🙃が使っている自作のライブラリscsnowman-libは以下のレポジトリで公開されています。

※他のものと一緒になっていてヤヤコシイことになっていますが、scsnowmoan-lib/ディレクトリ以下のファイル群が該当のファイルなので、これらのファイル群を“TeXが見える場所”に配置してください。

scsnowmanパッケージでは「ユーザが自由に☃の形状を定義する」ための​「ゆきだるま定義ファイル(snowman definition file)」​という仕組が用意されており、scsnowman-libではその仕組を利用して標準と異なる外形の☃を実現するための様々なゆきだるま定義ファイルを提供しています。

※「ゆきだるま定義ファイル」によりscsnowmanを拡張する話は2021年のアドベントカレンダー5記事でも登場しています。
※便宜的に以降の説明では「ゆきだるま定義ファイル」のことを“ライブラリ”と呼ぶことにします6

今回はこの中で最も基本的な zrextra ライブラリ(ファイル名は scsnowman-zrextra.def)を利用します。このライブラリでは「標準と同じ外形だが塗りつぶしの色が別個に指定できる」という形状の☃を定義しています。

zrextraライブラリを読み込むにはscsnowmanパッケージの\usescsnowmanlibrary命令を利用します。

\usepackage{scsnowman}%ゆきだるま☃
\usescsnowmanlibrary{zrextra}%ライブラリ読込

これによりzrextra特有の機能の設定をするための\sczrextrasetup命令が使えるようになります7。ここでbodyfillキーにより体の塗りつぶしの色、snowfillキーで雪玉の塗りつぶしの色を指定します。

\sczrextrasetup{bodyfill=White,snowfill=White}

☃の出力に対してzrextraライブラリで定義した形状を有効にするには\scsnowman命令のshapeキーにzrextraを指定する必要があります。

\scsnowman[scale=64, shape=zrextra, …(他オプション)…]

以上を踏まえると、全体のソースコードは以下のようになります。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman}%ゆきだるま☃
% zrextraライブラリを読み込んで塗りつぶしの色を指定する
\usescsnowmanlibrary{zrextra}
\sczrextrasetup{bodyfill=White,snowfill=White}
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% shapeに"zrextra"を指定して☃をフツーにする(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, shape=zrextra,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

zrextraで☃した結果(素敵😊)

再びフツーの☃画像が完成しました(幸せ😊)

方法③:scsnowmanだけで頑張る

いままでに紹介した2つの方法はどれも「scsnowmanパッケージとは別のもの」を使うものでした。これらのソフトウェアは別個にインストールする必要があるためソースコードの可搬性という点で問題になる可能性があります。そういうわけで、最後にscsnowmanパッケージだけでフツーの☃画像を実現する“裏技”を紹介することにします。

この記事の初めのほうで「\scsnowman命令のbodyキーを指定したら“顔なし”になった😱」という話がありましたが、その“顔なし”の☃をもう一度見てみましょう。このままでは使いものになりませんが、この上にもう一度☃をbody無しで)描いてみるとどうでしょう。今度は塗りつぶしがないので下の白色がそのまま残り、しかも顔のパーツや輪郭線はちゃんと描かれることになります。なんとこれで所望の☃になっています!😲

実際にこの方針を試してみましょう。まずbody=Whiteを指定したscsnowmanを配置します。雪玉も内部を白く塗りつぶしたいので、ここではsnow=Whiteを指定します(これで雪玉全体が白く塗りつぶされる)。その他のパーツはここでは描く必要がないので省略します。

\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, body=White, snow=White]};

そしてその後に、同じ位置にbody無しの\scsnowmanを配置します。今度はsnowに輪郭線の色を指定します。

\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown,
  snow=SkyBlue]};

全体のソースコードは以下のようになりました。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman}%ゆきだるま☃
% 他のやつは使わない
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% "塗りつぶし用の☃"を描く
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, body=White, snow=White]};
% 赤マフラーの☃を描く(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

意図通りになっているか、出力を確かめてみましょう。

“裏技”で☃した結果(素敵😊)

ちゃんとフツーの☃画像が完成しました(幸せ😊)

※実は先に紹介した記事でもこの“裏技”が密かに使われています🙃

なお、先程の説明では“同じ場所に2つの☃を出力する”のをTikZのレベルで行いましたが、LaTeXでの一般的な“重ね書き”のテクニックを用いることもできます。こちらの方が使いやすい場合もあるでしょう。

% 1つめの☃を現在位置を勧めずに出力する
\makebox[0pt][l]{\scsnowman[scale=64, body=White, snow=White]}%
\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};

まとめ

フツーの☃を出力してドンドン幸せ😊になりましょう!💁


  1. standaloneクラスはdvipdfmxとの相性が悪いのでこの組み合わせは避けた方が無難です。今の場合、日本語組版OpenTypeフォント出力も不要なので、エンジンにはpdfLaTeXを使うことにします。
  2. このscsnowmanの仕様(および後述のbodyの仕様)は恐らく、「記号(モノクロ絵文字)として☃を出力する」という発想に基づくのだと思われます。
  3. ちなみに、bodyを指定しない場合は輪郭線が「現在のテキスト色」で描かれます。
  4. さらに雪玉も自動的に(snowの色で)塗りつぶす設定に変わります。ちなみに、値を省略してbodyだけ指定した場合は「現在のテキスト色」をbodyに指定したのと同値になります。
  5. ……の場外乱闘編の28日目🙃
  6. そもそも読込用の命令の名前が \usescsnowmanlibrary なので……。
  7. ライブラリが \scsnowman 命令の書式を改変することは不可能なので、別個に設定命令を用意しています。