ドイツ語用の分綴パターンについては、従来のものの欠点に対する改善を行った(試験的な)新しいパターン(新・旧正書法の各々に対するもの)が作られていて、dehyph-exptl というパッケージ名で配布されている。数年前から W32TeX/TeX Live の欧文 TeX の各種フォーマットにはこの新パターンが組み込まれていたが、最近の W32TeX の更新で、pTeX にもこれが組み込まれることになった。
> dehyph-exptl も組込まれているとありがたいです。
2011/06/11 の更新で組み込みました。そのうち反映されると思います。
このような「既存の言語に対する別のパターン」を Babel *1で用いるには、hyphsubst パッケージ(oberdiek バンドルに含まれる)を用いるのが簡便である。ここではこのパッケージの使い方を解説する。(Polyglossia については後述。)
Babel でのドイツ語の言語オプション名は [n
]german
(「n」付が新正書法のもの)であり、通常は Babel は同じ名前で登録されたパターンを用いる。対して、新しいパターンは [n
]german-x-latest
という名前でフォーマットに登録されている。そこで、hyphsubst を次の例に示すようなオプションを指定して読み込む。
% 文字コードは適切なもので \documentclass[a4paper]{article} % (この例は新正書法のもの) % オプションに <言語オプション名>=<分綴パターン名> を指定 \usepackage[ngerman=ngerman-x-latest]{hyphsubst} % Babel を読み込む \usepackage[ngerman]{babel} \begin{document} Aber es k"onnte keine auf"|f"allige Unterschiede geben. % \typeout{\the\language} % これについては後述 \end{document}
最後にある \typeout{\the\language}
は現在有効なパターンの番号を画面に表示するためのハックである。これを入れておいて hyphsubst のない場合と比べれば、新しいパターンに正しく置き換わったかが判る。*2
なお、Polyglossia では新しいパターンの使用が最初からサポートされている。((ただし [n
]german-x-latest
に限定したものであり、汎用的ではない。恐らく hyphsubst パッケージの使用も可能だと思われる。))ドイツ語(言語名 german
)の言語用オプションとして latesthyphen=true
を指定すればよい。((Polyglossia の「言語用オプション」は特定の言語に対するオプション指定のことで、\setdefaultlanguage
のオプション引数等において指定される。Babel の「言語オプション」とは意味が異なることに注意。また、Polyglossia では新・旧正書法ともに言語名は german
であり、両者の区別は言語用オプションで行う。spelling=old
を指定すると旧正書法になる。))
% 文字コードは UTF-8 \documentclass[a4paper]{article} \usepackage{polyglossia} \setdefaultlanguage[latesthyphen=true,babelshorthands=true]{german} \begin{document} Aber es könnte keine auf"|fällige Unterschiede geben. %\typeout{\the\language} % 先述の通り \end{document}