マクロツイーター

はてダから移行した記事の表示が崩れてますが、そのうちに直せればいいのに(えっ)

TeXでもTypstでもコンパイル可能なファイルを作りたい話

これは「TeX & LaTeX Advent Caleandar 2023」の12日めの記事です
(11日めは h20y6m さんでした。13日めは CareleSmith9 さんです)

結局12日目が埋まらなかったので、某ZRの小ネタ話になります(ざんねん🙃)

SATySFi以外の話

2021年のアドベントカレンダーTeX/LaTeXSATySFiの両埋め)にこんなネタがありました。

今回はSATySFiでなくTypstでやってみようという話です。まあ技術🌲的に目新しいことは何もないわけですが。

Typstを紹介する話

過去の某ツイーター記事をみましょう。

もっとマジメな説明を読みたいという人はこちらをどうぞ。

というわけで、今回はTeXとTypstのpolyglotをつくります。

TeXとTypstでいかにpolyglotするかの話

SATySFiのとき全く同じです。「LaTeXではどうやっても無理なので、plain TeXを使うことにして、強い裏技に頼る」ことにします。同じ方針で書くと、SATySFiのときとほぼ同様のものが完成するわけですが、さすがにそれでは退屈すぎるでしょう。

そこで今回は「なるべくコードを短くする」という条件を加える1ことにします。

TeXとTypstでpolyglotしてみた件

88バイトになりました。

Typst//\def~#1{\let~#1\def#1{\setbox0\box255\gdef#1{~}}}~\plainoutput\vfil\break\TeX\bye

plain TeX(例えばpdftex)でコンパイルしたときの出力。

TeXな出力

Typst2コンパイルしたときの出力。

Typstな出力

polyglotできてますね😃

まとめ

というわけで、枠が埋まらないとカレンダーがざんねん🙃になってしまうので、皆さん「TeX & LaTeX Advent Calendar 2023」にドンドン登録して幸せ😊になりましょう!💁


  1. その代わり、出力については「各処理系の既定のページ設定が適用された上で、本文領域に名前(“TeX”および“Typst”)だけが書かれていればよい」というルールにします。
  2. //はTypstの行コメントを開始する記法なので、Typstのコードとして見た場合は単に「Typst」と書いてあるだけです。“細工”は全てTeX側で行っています。

LaTeXでフツーの幸せな出力を得る方法

これは「TeX & LaTeX Advent Caleandar 2023」の☃日めの記事です
(7日めは CareleSmith9 さんでした。9日めは ujimushi at SradJP さんです)

今年のアドベントカレンダーの重点テーマは​「(La)TeXで幸せになる方法」​です。そもそもLaTeXは文書を作成するためのソフトウェアなので、「LaTeXで幸せになる」ための“正攻法”は「幸せな出力を得ること」になるでしょう。そして、LaTeXで手軽にできる​「幸せな出力」​と聞いて真っ先に思いつくものといえば、やっぱりコレでしょう。

ツイッタァー(現𝕏)のどっかの某氏🙃のアカウントを見に行けば見飽きるほど大量に豊富に貼られている​「いつものゆきだるま☃画像」​です(素敵😊)。

フツーの☃画像(素敵😊)

※説明の都合上、幸せと無関係な要素(🦆とか🙃とか)は除去しました。

……なのですが、ここで問題です

この画像を実際にLaTeXで作るにはどうすればよいでしょう?

※ツイッタァー(現𝕏)に上げているのはPNG画像ですが、PDF→PNGの変換は容易であるため、ここでは元の「PDFの画像(文書)」を作ることを問題にします。

とにかくフツーの☃画像してみる話

TikZしてscsnowmanしたら完成……しない話

一見するととても簡単な話に見えます。画像の背景は単純に色を塗っただけのものです。空の部分はグラデーションになっていますが、これもTikZで簡単に実現できそうです。単一のtikzpicture環境の中身をそのまま出力文書としたいのでstandaloneクラス1を利用しましょう。

% pdfLaTeX文書
% standaloneクラスを用いるので, tikzpicture環境の
% "中身"だけが文書として出力される.
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz}
\begin{document}
% 72dpiでビットマップ画像に変換した際に
% "TikZ座標の1単位=1ピクセル"
% になるように, 単位を1bpに設定する.
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
% 画像の大きさを強制的に指定する(480bp×360bp)
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
% 地面
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
% 空(下部はSkyBlue!5で中ほどから上に向かって色が濃くなる)
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
\end{tikzpicture}
\end{document}

このソースをpdflatexでタイプセットすると以下の出力が得られます。

背景の画像(非素敵😐)

完璧ですね!😃

あとはscsnowmanパッケージを追加して適当な位置に赤マフラーの☃を配置するだけです。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman}%ゆきだるま☃
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% 赤マフラーの☃を追加する(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

scsnowmanした結果(チョットアレ😰)

これで完成……アレレ、なんか☃が青ざめているようです😰 何が起こったのでしょうか?

scsnowmanでフツーに☃できない話

実は\scsnowman命令は既定では☃の中身を塗りつぶしません2。なので背景の空の色が見えてしまっているのです。(雪玉の中身についても同様です。)

とはいえ、\scsnowman命令にはいっぱいオプションがあったはずなので、恐らく「体の色」の指定もきっとできるでしょう。そう思ってマニュアルを見ると、bodyというオプションがあることがわかります。体の色を白にするために\scsnowmanのオプションにbody=Whiteを追加してみましょう。

% \scsnowman のオプションに"body"を追加
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, body=White,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown,
  snow=SkyBlue]};

bofy=Whiteを指定した結果(アレ😱)

アレレ、顔がなくなってしまいました😱

この理由は、bodyオプションを指定すると輪郭線の扱い3が変わるからです。具体的には「全体の輪郭線は描かれなくなりその内部の線(顔のパーツの線やマフラーの輪郭線など)は白で描かれる4」ようになります。顔のパーツと体が同じ色なので見えなくなったわけです。

bodyオプションがどういう効果をもっているかは白以外の色を指定してみればわかるでしょう。以下の画像はbody=Turquoiseを指定した結果です。

body=Turquoiseを指定した結果

それでは、当初考えていたように「輪郭線をフツーに描いて中身を白く塗りつぶす」にはどう設定すればいいのでしょうか。実は現状のscsnowmanパッケージはこの設定をサポートしていません。フツーの☃画像を出力して幸せになるのは案外大変なようです😧

それでもフツーの☃画像したい話

というわけでここからが本題です。scsnowmanパッケージをフツーに使うだけではフツーの☃画像が作れないことがわかりました。フツーの☃画像を作って幸せになるにはどうすればいいでしょうか。ここでは3つの解決策を紹介します。

方法①:scsnowman+パッケージを使う

実はこの​「色指定の自由度がチョット足りない」​という問題は、3年前の「TeX & LaTeX Advent Calendar 2020」の記事で既に指摘されています。

そして、その記事の筆者により作製された「scsnowmanを拡張するパッケージ」であるscsnowman+ パッケージが公開されています。

scsnowman+ パッケージを読み込むと、\scsnowman命令が拡張されて「*-形」である\scsnowman*が使えるようになります。この\scsnowman*では「体の塗りつぶしの色を指定する」ためのbodyfillや「雪玉の塗りつぶしの色を指定する」ためのsnowfillなどの追加のオプションを指定して色をもっと自由に設定できるようになっています。

今回は体と雪玉を白く塗りつぶしたいのでbodyfill=White, snowfill=Whiteとオプションを指定しましょう。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman+}%ゆきだるまプラス☃
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% 拡張された"\scsnowman*"命令でフツーの☃を出力(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman*[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue,
% bodyfill, snowfill オプションを設定
  bodyfill=White, snowfill=White]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

scsnowman+ で☃した結果(素敵😊)

フツーの☃画像が完成しました(幸せ😊)

方法②:scsnowman-libを使う

ところで、どっかの某氏🙃は飽きもせず延々とフツーの☃画像を流し続けているわけですから、どっかの某氏🙃も何らかの手段を持っているはずです。どっかの某氏🙃が使っている自作のライブラリscsnowman-libは以下のレポジトリで公開されています。

※他のものと一緒になっていてヤヤコシイことになっていますが、scsnowmoan-lib/ディレクトリ以下のファイル群が該当のファイルなので、これらのファイル群を“TeXが見える場所”に配置してください。

scsnowmanパッケージでは「ユーザが自由に☃の形状を定義する」ための​「ゆきだるま定義ファイル(snowman definition file)」​という仕組が用意されており、scsnowman-libではその仕組を利用して標準と異なる外形の☃を実現するための様々なゆきだるま定義ファイルを提供しています。

※「ゆきだるま定義ファイル」によりscsnowmanを拡張する話は2021年のアドベントカレンダー5記事でも登場しています。
※便宜的に以降の説明では「ゆきだるま定義ファイル」のことを“ライブラリ”と呼ぶことにします6

今回はこの中で最も基本的な zrextra ライブラリ(ファイル名は scsnowman-zrextra.def)を利用します。このライブラリでは「標準と同じ外形だが塗りつぶしの色が別個に指定できる」という形状の☃を定義しています。

zrextraライブラリを読み込むにはscsnowmanパッケージの\usescsnowmanlibrary命令を利用します。

\usepackage{scsnowman}%ゆきだるま☃
\usescsnowmanlibrary{zrextra}%ライブラリ読込

これによりzrextra特有の機能の設定をするための\sczrextrasetup命令が使えるようになります7。ここでbodyfillキーにより体の塗りつぶしの色、snowfillキーで雪玉の塗りつぶしの色を指定します。

\sczrextrasetup{bodyfill=White,snowfill=White}

☃の出力に対してzrextraライブラリで定義した形状を有効にするには\scsnowman命令のshapeキーにzrextraを指定する必要があります。

\scsnowman[scale=64, shape=zrextra, …(他オプション)…]

以上を踏まえると、全体のソースコードは以下のようになります。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman}%ゆきだるま☃
% zrextraライブラリを読み込んで塗りつぶしの色を指定する
\usescsnowmanlibrary{zrextra}
\sczrextrasetup{bodyfill=White,snowfill=White}
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% shapeに"zrextra"を指定して☃をフツーにする(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, shape=zrextra,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

zrextraで☃した結果(素敵😊)

再びフツーの☃画像が完成しました(幸せ😊)

方法③:scsnowmanだけで頑張る

いままでに紹介した2つの方法はどれも「scsnowmanパッケージとは別のもの」を使うものでした。これらのソフトウェアは別個にインストールする必要があるためソースコードの可搬性という点で問題になる可能性があります。そういうわけで、最後にscsnowmanパッケージだけでフツーの☃画像を実現する“裏技”を紹介することにします。

この記事の初めのほうで「\scsnowman命令のbodyキーを指定したら“顔なし”になった😱」という話がありましたが、その“顔なし”の☃をもう一度見てみましょう。このままでは使いものになりませんが、この上にもう一度☃をbody無しで)描いてみるとどうでしょう。今度は塗りつぶしがないので下の白色がそのまま残り、しかも顔のパーツや輪郭線はちゃんと描かれることになります。なんとこれで所望の☃になっています!😲

実際にこの方針を試してみましょう。まずbody=Whiteを指定したscsnowmanを配置します。雪玉も内部を白く塗りつぶしたいので、ここではsnow=Whiteを指定します(これで雪玉全体が白く塗りつぶされる)。その他のパーツはここでは描く必要がないので省略します。

\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, body=White, snow=White]};

そしてその後に、同じ位置にbody無しの\scsnowmanを配置します。今度はsnowに輪郭線の色を指定します。

\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown,
  snow=SkyBlue]};

全体のソースコードは以下のようになりました。

% pdfLaTeX文書
\documentclass{standalone}
\usepackage[svgnames]{xcolor}
\usepackage{tikz,scsnowman}%ゆきだるま☃
% 他のやつは使わない
\begin{document}
\begin{tikzpicture}[x=1bp,y=1bp]
\useasboundingbox (0,0) rectangle (480,360);
\fill[DarkGreen] (0,0) rectangle (480,40);
\fill[SkyBlue!5] (0,40) rectangle (480,360);
\shade[top color=SkyBlue!65, bottom color=SkyBlue!5]
  (0,180) rectangle (480,360);
% "塗りつぶし用の☃"を描く
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64, body=White, snow=White]};
% 赤マフラーの☃を描く(素敵)
\node at (232,248) {\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};
\end{tikzpicture}
\end{document}

意図通りになっているか、出力を確かめてみましょう。

“裏技”で☃した結果(素敵😊)

ちゃんとフツーの☃画像が完成しました(幸せ😊)

※実は先に紹介した記事でもこの“裏技”が密かに使われています🙃

なお、先程の説明では“同じ場所に2つの☃を出力する”のをTikZのレベルで行いましたが、LaTeXでの一般的な“重ね書き”のテクニックを用いることもできます。こちらの方が使いやすい場合もあるでしょう。

% 1つめの☃を現在位置を勧めずに出力する
\makebox[0pt][l]{\scsnowman[scale=64, body=White, snow=White]}%
\scsnowman[scale=64,
  muffler=Red, hat=Green, buttons=RoyalBlue, arms=Brown, snow=SkyBlue]};

まとめ

フツーの☃を出力してドンドン幸せ😊になりましょう!💁


  1. standaloneクラスはdvipdfmxとの相性が悪いのでこの組み合わせは避けた方が無難です。今の場合、日本語組版OpenTypeフォント出力も不要なので、エンジンにはpdfLaTeXを使うことにします。
  2. このscsnowmanの仕様(および後述のbodyの仕様)は恐らく、「記号(モノクロ絵文字)として☃を出力する」という発想に基づくのだと思われます。
  3. ちなみに、bodyを指定しない場合は輪郭線が「現在のテキスト色」で描かれます。
  4. さらに雪玉も自動的に(snowの色で)塗りつぶす設定に変わります。ちなみに、値を省略してbodyだけ指定した場合は「現在のテキスト色」をbodyに指定したのと同値になります。
  5. ……の場外乱闘編の28日目🙃
  6. そもそも読込用の命令の名前が \usescsnowmanlibrary なので……。
  7. ライブラリが \scsnowman 命令の書式を改変することは不可能なので、別個に設定命令を用意しています。

アドベントがはじまった ― \begin{texadvent2023}


TeX & LaTeX Advent Calendar 2023

TeX界における年末の恒例イベントとなったといっても過言ではないような気もチョットするかもしれないアドベントカレンダーが今年も始まりました。今年は12回目の開催となります。

重点テーマ

今年の重点テーマはコレです。

(La)TeXで幸せになる方法

徹底的にtabularrayを使いこなして幸せ😊になるのもよし、ニュースタイルの \expandafter 音頭を踊って幸せ😊になるのもよし、\futurelet にピッタリのビールとつまみを嗜んで幸せ😊になるのもよし、あるいはキホンに立ち返って、3日間不眠不休でTeX言語🤮を書きまくって幸せ🤯になるのもよし1、それぞれの人が考えるイロイロな「幸せメソッド😊🤯」を知識共有していきましょう!

※例によって、重点テーマは「必須」ではありません。あらゆるTeXネタを歓迎しております。

で、初日のネタは

こちらになります。

qiita.com

まだ参加できます!

TeX & LaTeX Advent Calendar 2023(#texadvent2023)は

まだまだ参加者募集中です。

TeXエンジンなネタ、TeXフォーマットなネタ、TeXディストリビューションなネタ、TeXエコシステムなネタ、 TeXコミュニティなネタ、TeXフォークダンスなネタ、TeXスイーツなネタ、TeXボディービルディングなネタ、その他、お持ちの方はぜひぜひ、

ご参加おねがいします!

今ならまだ好きな日を選べます! 登録はお早めに!

* * *

例によって「TeX以外」な人はこっち。

SATySFi Advent Calendar 2023

アレッ、「Typst Advent Calendar 2023」が存在しない? 何でなんでナンデ😧


  1. よいのか?🤔

去年のアレ(アレ)を振り返ってみる


TeX & LaTeX Advent Calendar 2023

昨年(2022年)の「TeX & LaTeX Advent Calendar」はこんな感じでした。

12/01zr_tex8rTeX言語でドドスコ(ラブ注入)してみた話
12/02h20y6mLaTeXで旧暦してみる
12/03hid_alma1026TeX by Topic by Comic challenge
12/04ut数式フォントについて、ちょっとだけ
12/05ut数式フォントについてとスペースについてと
12/06thth\NewDocumentCommand さえあればいい
12/07CareleSmith9[TeX][TikZ] TikZ で名刺作り
12/08thth\UseName でもエラーが出したい!
12/09zr_tex8r一言ツイートネタ🙃
12/10wtsnjpChatGPTのTeX知識を添削してみた | ラング・ラグー
12/11munepi〇〇env系ツールtlenvでTeX Liveもインストールしてみた
12/12zr_tex8r将来のpLaTeXでマフラーの色を指定する方法
12/13doraTeX英単語から発音記号を自動出力する
12/14yi_chemistMarkdown中の下付き文字をPandocでWord/LaTeX出力する際にLuaフィルターで処理してみる
12/15h20y6m(u)pLaTeXでもっと和文多書体する話
12/16zr_tex8r続・一言ツイートネタ🙃🙃
12/17250kunicode-mathとかdiffcoeffとか
12/18CareleSmith9[TeX][TikZ] y 軸を下向きに取る
12/19yukishitaLaTeXで独自に作図した図形を記号として使う
12/20MusicDumpTeX の PL ファイルを知ってみよう
12/21mattskala自分のドキュメントクラスを作ろう・アンスズ・mskalaのページ
12/22tasusuTeXはプログラミング言語(コンピュータ歴史博物館によると)
12/23wtsnjpとにかくWEB言語してみたい | ラング・ラグー
12/24k16shikanoモダンTeX on LaTeX入門
12/25zr_tex8r徹底解説! マクロの等価性を理解する

というわけで、今年はこれを1ミリも参考にせずに、自分が素敵だと思うネタを全力でぶつけていきましょう!

今年も思い切りTeXでAdvent Calendarする件について

思い切り!!


TeX & LaTeX Advent Calendar 2023

TeXLaTeX Advent Calendar 2023

とっておきのTeXLaTeXネタを皆で持ち寄って楽しむ
TeX & LaTeX Advent Calendar」
今年は 12回目 の開催となります。
皆さんの、心をこめた素敵なネタを例によってお待ちしております!
ハッシュタグは「 #texadvent2023 」
TeXLaTeX初心者大歓迎。 ←重要
TeXLaTeX非初心者大歓迎。

今年の重点テーマはコレです!

今年の重点テーマ

今年の重点テーマはコレです。
「(La)TeXで幸せになる方法」

TeXLaTeXの大きな特徴は 「とにかく拡張性が高い」 ということです。これは他の競合技術(SATySFi、Typstなど)と比較して顕著な点であり、LaTeXのレベルでは「他よりも圧倒的に豊富な量の拡張ライブラリを有する」、またTeXプログラミング(LuaTeXのLuaも含む)のレベルでは「(もはや無法といえるほどに)自由に機能拡張する手段が与えられている」という特徴をもちます。このため(La)TeXは「使いこなせばこなすほど文書の可能性が広がって、どんどん 幸せ になる」ソフトウェアということができるでしょう。

(La)TeXを使いこなす方法を広く伝授して、人類をもっと幸せにしていきましょう!

例によって「重点テーマ」は「制限」ではありません。

(前略)……以下のいずれかテーマに該当する何かを書きます。

  • 「(La)TeXで幸せになる方法」に大いに関連するTeXLaTeXネタ。
  • 「(La)TeXで幸せになる方法」にチョット関連するTeXLaTeXネタ。
  • 「(La)TeXで幸せになる方法」にサッパリ関連しないTeXLaTeXネタ。

このように、以前と同じく、TeXに関連するもの(\expandafter ベンチプレスとか、\futurelet スクワットとか、\afterassignment デッドリフトとか、……)なら何でも構いません。

皆さんの、心温まるTeXネタで寒い冬を乗り越えましょう☃️!

もっともっと画期的なTypst用文書テンプレートをつくった件

今日11月11日は、きりたんぽの日!

というわけで、1TeXのコンセプトを踏襲した上でさらに画期的、さらに本質的に進化させた、Typst用の新しい文書テンプレートである「sc1Typst」をつくりました!😃

そして偶然ですが1、まさに今日の日に某ツイッタァー(現𝕏)において「本質的なConf」であるナントカConfが3年ぶりに開催されました2

さっそく、sc1Typstについて発表しました3😃

発表スライド(抜粋)

発表の時に使ったスライド4の全体については、すぐ上の某ツイッタァー(現𝕏)のカード内のリンクからたどれる某ツイッタァー(現𝕏)のスレッドを見てください。

まとめ

というわけで、⛄芸人の皆さんはぜひ、Typstしましょう!💁


  1. ……ということにしておきましょう🙃
  2. 聞くところによると、ところ変わって帯広ではアレなConfであるTeXConfが開催されていたらしい。
  3. ……ということにしておきましょう🙃🙃
  4. ……ということにしておきましょう🙃🙃🙃

記号と数字だけでTeX言語する話

というわけで、本記事では「TeX言語のコード(LaTeX文書のソースも含む)を記号と数字のみを含む(チョット読みにくい🎄)コードに変換する」ための具体的な手順について解説します。

※対象とするコードはASCII文字のみを含むものに限ります。TeXエンジンの種類には依存しません。

キホン的知識

なんと、インタァーネットには「チョット読みにくいTeX言語のキホン」を解説したスバラシイ記事があります。チョット読みにくいTeX言語初心者はまずこれを読みましょう。

ここで紹介する手順では上記記事の「サーカムフレックスメソッド」(ソース上の文字を代用する^^ab形式の文字コード表記)を利用します。

※本記事では「サーカムフレックスメソッド」のことを(例によって1TeXエスケープ」と呼びます。

英字をグッバイする手順

ASCII文字からなるコードを「記号と数字だけ」にするには英字(A~Z、a~z)を除去する必要があります。このため「英大文字を除去する」「英小文字を除去する」という2つのステップを順に実行することで実現します。

英大文字をグッバイする話

最初のステップとしてASCII文字のコードを「英大文字を含まないもの2」に変換します。これは機械的に処理できず個別に対処する必要がありますが、それほど難しい作業ではありません。元々、TeX言語の「プログラムっぽいコード」では大文字はほとんど使われません。TeXのプリミティブ名やキーワードは全て小文字であり、フォーマットが提供する制御綴名も大部分が小文字のみからなるからです。

このため、英大文字が出現する箇所の多くは「文字を出力する部分」になり、これについては\uppercaseを使うと対処できます。次のようなコードを考えてみましょう。

[example-1.tex](英大文字を含む)
\documentclass{article}
\begin{document}
Hello, ZR world!
\end{document}

\uppercaseを利用することで大文字を消すことができます。

[example-1a.tex](英大文字を除去した)
\documentclass{article}
\begin{document}
\uppercase{h}ello, \uppercase{zr} world!
\end{document}

もちろん、時には大文字を含む名前の制御綴が使われることもあり、これの対処は厄介です。

[example-2.tex](英大文字を含む)
\documentclass{article}
\begin{document}
Hello, {\TeX} world!
\end{document}

この場合は\csname~\endcsname\uppercaseを駆使して対処することになります。

[example-2a.tex](英大文字を除去した)
\documentclass{article}
\begin{document}
\def\smalle{e}
\uppercase{h}ello, \uppercase{\csname t\smalle x\endcsname} world!
\end{document}

少し技巧的なので補足しておきます。\uppercaseは文字トークンだけに作用して制御綴は変化させないので、

\uppercase{\csname t\smalle x\endcsname}
↓実行
\csname T\smalle X\endcsname
↓展開(ここで \smalle も展開)
\TeX

となり結果的に\TeXが実行されます。注意すべきなのは「\uppercaseは展開可能でない」(そして\csname~\endcsnameの中は展開で処理される)ということで、このため\csname\uppercase{t}e\uppercase{x}\endcsnameとは書けません。

もう少し“機械的に処理”したいという場合は「大文字に変換する完全展開可能なマクロ(\upcase)を作成3する」という手法が有効でしょう。

[example-2b.tex](英大文字を除去した)
\documentclass{article}
\makeatletter
\def\upcase#1{\@nameuse{my@uc/#1}}
\def\my@uc@a#1{\uppercase{\my@uc@b#1}}
\def\my@uc@b#1#2{\@namedef{my@uc/#2}{#1}}
\@tfor\my@x:=abcdefghijklmnopqrstuvwxyz\do{%
  \expandafter\my@uc@a\my@x\my@x}
\makeatother
\begin{document}
\upcase{h}ello, {\csname\upcase{t}e\upcase{x}\endcsname} world!
\end{document}

この\upcaseを使うことで変換がかなり楽になります。

英小文字をグッバイする話

[example-3.tex]

先のステップで英大文字を除去したので残っている英字は小文字だけになります。これは「英小文字をTeXエスケープ形式に変換する」ことで機械的に除去できます。英小文字(a~z)のASCIIコードは0x61~7Aであるため、単文字(^^X)のTeXエスケープ形式に直した場合のXの部分の文字コードは0x21~3Aとなり、この範囲の文字は全て記号と数字になるわけです。

変換前: abcdefghijklmnopqrstuvwxyz
変換後: !"#$%&'()*+,-./0123456789:

ただしこの中の「p~y」の範囲については少し注意が必要です。例えば「w3」という文字列の英小文字部分を上記の規則に従ってTeXエスケープに変換すると^^73となりますが、これは16進法のTeXエスケープの形式に合致しているためsという異なる文字列に解釈されてしまいます。

この問題を回避するため、「p~y」の範囲の文字は単文字のTeXエスケープ(^^0~^^7)の代わりに16進法のTeXエスケープ(^^70~^^79)に変換することにします。するとw3の変換結果は^^773となり、別の文字列に解釈されることはなくなります4

まとめると、以下の手順により英小文字を除去できます。

  • まず「p~y」を16進法TeXエスケープ(^^70~^^79)に変換する。
  • 残りの英小文字(a~z)を単文字TeXエスケープ(^^!~^^:)に変換する。

次のような(英大文字を含まない)コードを考えてみましょう。

[example-3.tex](英小文字を含む)
\catcode`\@=11
\newcount\my@n
\my@n=42

先の手順に従って変換すると英小文字を含まないコードが得られます。

[example-3a.tex](英小文字を除去した)
\^^#^^!^^74^^#^^/^^$^^%`\@=11
\^^.^^%^^77^^#^^/^^75^^.^^74\^^-^^79@^^.
\^^-^^79@^^.=42

このexample-3a.texTeXの字句解析の規則の下ではexample-3.texと全く同一のコードと解釈されるわけです。

記号と数字だけで“hello world”をやってみる話

ここまで説明した2つのステップを順に実行することで、どんなTeX言語コードでも「記号と数字だけのコード」に変換できます。例として、“hello world”のLaTeX文書を「記号と数字だけのコード」に変換してみましょう。

[example-4.tex](英字を含む)
\documentclass{article}
\begin{document}
Hello, {\TeX} world!
\end{document}

これは前節で例にあげたexample-2.texと同じものです。従ってここから「英大文字を除去」した結果のコード(の一例)がexample-2a.texとなります。ただし変換後のコードは横に長くなるので、改行を多めに入れておくことにします。

[example-4a.tex](英小文字を含む)
\documentclass{article}
\begin{document}
\def\smalle{e}
\uppercase{h}ello,
\uppercase{\csname
t\smalle x\endcsname}
world!
\end{document}

あとはこのコードを“TeXエスケープ変換”して「英小文字を除去」すれば「数字と記号だけのコード」が完成します。

[example-4b.tex](英字を除去した)
\^^$^^/^^#^^75^^-^^%^^.^^74^^#^^,^^!^^73^^73{^^!^^72^^74^^)^^#^^,^^%}
\^^"^^%^^'^^)^^.{^^$^^/^^#^^75^^-^^%^^.^^74}
\^^$^^%^^&\^^73^^-^^!^^,^^,^^%{^^%}
\^^75^^70^^70^^%^^72^^#^^!^^73^^%{^^(}^^%^^,^^,^^/,
\^^75^^70^^70^^%^^72^^#^^!^^73^^%{\^^#^^73^^.^^!^^-^^%
^^74\^^73^^-^^!^^,^^,^^% ^^78\^^%^^.^^$^^#^^73^^.^^!^^-^^%}
^^77^^/^^72^^,^^$!
\^^%^^.^^${^^$^^/^^#^^75^^-^^%^^.^^74}

まるで解読不能なのでトッテモ素敵😍

実際にLaTeXで処理してみましょう。

example-4bの出力

元のコードと同じ出力が得られました😊

まとめ

というわけで、「TeX言語🤮はカンタンだからツマラナイ🙁」という人はぜひ、使う文字を制限する🎄ことに挑戦してみましょう!💁(えっ)


  1. 筆者が常用している用語が「TeXエスケープ」です。ちなみにこの表記に対する“正式名称”は存在しないようです。(tex.webの中では“expanded characters”のような表現が使われています。)
  2. ただし、「A~I・P~Y」の範囲の文字はTeXエスケープで記号と数字のみの表記(^^41^^49^^51^^59)に変換できるので、実際に問題になるのは「J~O・Z」だけになります。
  3. 「完全展開可能でないもの完全展開可能にする」ための常套手段である「事前に計算してその結果を(擬似)配列に保存する」という手法を使っています。
  4. ^^で始まる16進法のTeXエスケープの16進数値は常に丁度2桁で表されます。Unicode対応のXeTeXやLuaTeXでは0x100以上の文字コードが使われますが、その場合のTeXエスケープ表記は^^^^2603^^^^^^01f986のように^の個数を増やした形になります。