「Tフォント」の「第一期β版」が公開されている(2011 年 2 月)ことを割と最近になって知った。全然話題にならなかったせいか全く見逃していた。
Tフォントは約 12 万字の漢字*1を収録することが予定されているが、今回の版で収録されているのは「GT漢字セット」部分の 78,675 文字である。つまり以前の「GT フォント」と同じで特に新しいことはない。*2(というかもう漢字はお腹いっぱいです…。)
それより面白いのは非漢字である。基本的には、JIS X 0213(拡張漢字)の非漢字の集合が収録範囲となっているが、*3その他に、昔に「TRON コードには入っている文字」として話題になっていた「住民基本台帳用の変体仮名」(住基仮名)と「非標準な濁点・半濁点付の仮名」(〈あ゛〉とか)が PUA の符号位置に収められている。*4
「Tフォント」を扱うためのパッケージ pxtfont.sty を追加した PXgtfont パッケージバンドルのテスト版を置いておく。PXgtfont バンドル(の pxgtfont パッケージ)は元々「GTフォント」のためのものであるが、pxtfont しか使わないのであれば、「GTフォント」のインストールは不要である。
- 「簡易包装コーナー」 → PXgtfont-0.4alpha.tar.xz
まだドキュメントが古いまま(0.3 版)なのでテスト版となっている。pxtfont パッケージでは pxgtfont と同じ命令が使えて、加えて上に挙げた特殊な文字を出すための命令 \Tf
が用意されている。上の出力は以下のようなソースで得られる。
\documentclass[a4paper]{jsarticle} \usepackage{pxtfont} \begin{document} \begin{center}\huge \Tf3き\Tf1そ\Tf1ば \end{center} \begin{quote} カァ\Tf{エ゛}ィ チバダ\Tf{イ゛} ヨシノヤァガ\Tf_{ル} ヅプダ\Tf_{ヌ}ギソゥ。 ヨシノヤァ!\\ ハヅ\Tf_{プ}シ ニッヂ\Tf_{ク} カァ\Tf{ウ゛}ス マ\Tf_{ヌ}マ\Tf_{ヌ}シ % チ\Tf_{ヌ}チ\Tf{ァ゜}トケィヂ ヌ\Tf_{ル゛}ポギソゥ。\\ ハ\Tf_{ス}シ、アキティ リユノシ ホギ サギァマ\Tf_{ク}チ\Tf{ァ゜}ァ フノシ % 「150エナサギ」シ\\ シカ\Tf{エ゛}ィシ フノギソゥ。\\ アィヨゥ! プップァバ? カ\Tf_{ク゜}カ\Tf{カ゜}バ?\\ ユツ\Tf_{ル゛}バ\Tf_{ル}ヨゥ! % % (以下省略) \end{quote} \end{document}
*1:「36 万」というのは書体差を含めた字形の数らしい。(3 書体だから 3 倍になる。)今まで知らなかったぞ。
*2:ただし、GT 書体のあの独特の結体ではなく「普通の明朝体」になっている。
*3:TrueType 版は「Unicode フォント」だから JIS が定める Unicode の符号位置に各文字が入っている。だけど何故か一部の文字の符号位置が異なっている(全く無関係な文字の位置に入っている)。何か意図はありそうなんだけど、結果的には単に「まともに使えない」ことにしかなっていないように感じる。まあ、そもそも非漢字については公式には何もアナウンスされていないので、恐らくは正式なものではないのだろう。完成版では変わる可能性がある。
*4:TRON コードには住基仮名のセットとは独立により広範な変体仮名の集合の収録が確かあったはずだが、このフォントではそちらは非収録である。それから、念のために言うと、トンパ文字は入っていない。